山道を歩き続けて半日。
過酷な山越えに私の足取りはどんどん重くなってくる。
「少し急がないと危険ですね」
「え…」
「日が暮れると山道は危険ですから」
「そっか…」
疲れた、なんて言えない…。
頑張らなくちゃ。
「紗南、平気か?」
「え…あ、うん。大丈夫」
そんな私にレンが声をかけてくれる。
なんか、優しい!
でも、その優しさに甘えすぎちゃダメだよね。
頑張らなきゃ。
足を引っ張りたくない。
「怪我が治ったばっかなんだ。体力も戻りきってないだろ。無理するな」
「レン…。ありがとう。でも、本当に大丈夫だから」
「そうか」
「うん。それに…疲れるとかより、夜の山にいることの方が怖い!」
「ふっ、それもそうだな」
私の言葉に笑う。
旅に慣れてきて少しいろいろわかってきた。
夜になったからといってむやみに火はたけないことも。
悪魔に襲われるリスクがあるから。
ということは、外灯のない山の中で過ごさないといけないということ。
そんなの、恐ろしくて無理!
「悪魔は平気なのに、そう言うのは怖いのか」
「悪魔と幽霊は別よ!」
こちらにも幽霊という概念はあるようで、レンにそうからかわれる。
悪魔は実態がある。
でも、幽霊はその存在自体が不確かなもの。
怖いに決まってる。


