目の前で起こった出来事に、レンは動揺していた。
その隙を狙い悪魔が襲いくる。
それをせき止めたのはソウシ。
向かいくる悪魔を一手に引き受け切り捨てていく。
これほどまでに動揺したレンを初めて見た。
以前、紗南が浚われた時以上の動揺。
気を確かにもち、最後まで悪魔を切り捨てた騎士たちは、すぐに紗南のもとに集まった。
「紗南!」
「紗南ちゃん!」
「止血します!」
ソウシが荷物の中から布を取り出し紗南に駆け寄る。
しかし、声が届いていないのか、レンが紗南を抱きかかえて放さない。
「レン…?紗南さんを渡してください。止血します!」
ソウシが声をかけるが、レンには届いていないようだった。
仕方なく、ソウシはレンから引き離すように紗南を奪い止血に取り掛かった。
「ソウシ、紗南ちゃんは助かるよね…?」
「助けます!助けなければ…」
ソウシは、レンを見る。
レンの精神状態も心配だった。
目の前で、自分を守るために傷ついた紗南。
平気なはずはなかった。
現に言葉も発さず、動揺を隠せないレンの姿。
「しっかりしてください!」
レンに向けた言葉だった。
しかし、レンには届かない。
レンは、紗南の姿にユリアの姿を重ねていた。
自分のせいで命を落としたユリア。
ずっと自分を責めてきた。
そして今、自分のせいで血を流す紗南の姿に、恐怖を覚えた。
また失うかもしれない。
自分のせいで、大切な人が……。


