「待たせた」




声がしてその大広間に現れたのは、従者を連れたおじさんくらいの年齢の男の人。
その人が、王様だろう。
リュウは唇を噛みしめ、怒りを抑えている。
ルネス王国の騎士として、立派に務めようとしている。




「用というのは、なんでしょう」

「よく、我がムーン王国へ来られた。歓迎しよう」

「歓迎、感謝いたします」

「さて、我がムーン王国でなにを見つけた?」

「なにをと言いますと?」





レンの視線が鋭く光る。
レンは、いたって冷静に対応しているけれど、怒りがピリピリと伝わってくる。






「見つけた物を差し出しなさい。それは、我が国のもの。他国のものには渡すことはできん代物だ」

「…っ!」

「我らも、いかに取り出すか思案しておったところだ。よくぞ持ち出してくれた。褒美は満足するだけ持たせよう」





淡々と、さも当たり前のように言い捨てる態度。
なにを言っているの?
自分は今だって、安全な所にいながらあの場所から持ち出されるのを待っていたんでしょう?
持ち出されたら、それは自分たちの物だって言うの?




「いくら褒美を用意されようと、これは渡すわけにはいきません」

「ここに来るときにも言われなかったか?自分たちの立場を弁えよ」

「これは、この先の悪魔との戦いに必要な武器です。その武器を扱えるものもおります。あなた方にはこれを扱うことはできない」

「お前たちにできて我が国の騎士にできんというのか?」






王様とレンとの間に火花が散る。
いくら口の悪いレンだって、相手は王様だ。
あまりたてつくのは、まずいんじゃないだろうか。






「それに、お前たちの悪魔との戦いなど興味もないわ」

「興味がない?この戦いは、すべての国にかかわることです!」