私たちは、城に連れてこられていた。
道中、誰も一言も発さず、リュウは特別怖い顔をしていた。

それもそのはず、リュウにとってこの国の王たちは自分たちを見捨てた憎むべき相手。
それをわかって、私たちを自分の城に呼んでいるのだろうか。


ムーン王国の王様。
いったいどんな人なんだろう。







「…紗南、ごめん」

「え?」

「お前が、そんな顔しなくていいんだ」





リュウが寂しそうに眉を顰め私の頭を撫でた。
私だって、リュウにそんな顔してほしくないよ。
リュウは、明るく元気に笑っていてほしい。




「リュウ。大丈夫だからね」

「…ありがとう。本当に、紗南は優しいな」




違うよ、リュウ。
私が見ていたくないだけ。
自分のためだよ。
優しくなんて、ないの。



「中へ」




そう促され私たちは城の中へと進む。
この先に、何が待ち受けていようと、私がリュウを守る。
騎士とか、王様とか、そんなものにとらわれない部外者の私だからこそ、できることだってあるはず。


私にできることを、するんだ。






「ここでお待ちください」





そうして通されたのは真っ赤な絨毯が伸びたいかにもな大広間。
座るような椅子もなくて立ちすくんだまま待った。