そして、嫌そうな顔のレンに外に連れ出された私はそこで驚愕の光景を目の当たりにした。







「え・・・なんで・・・」

「どうした?」







私の言葉に不思議そうなレン。
私が驚いたのは、そこから見た街並みが、私が知っているごちゃごちゃしたコンクリートの地面やビルの立ち並んだ街並みとまったく違ったからじゃない。



空にあるはずのものがなかった。












「月が・・・ない・・・」

「月?なんだ、それは」

「月よ!空にあるはずの!夜に空にあるはずの、月!」

「なにを言ってる、空には星しかないだろう」







なにを言ってるのはあなたの方でしょ?
だって、月は必ずあるもので、夜になったら太陽の代わりに空に輝いているはずで。





いくら、恰好はコスプレできたって、行動や言葉で騙せたって、月まで隠せるはずない。
頭の中が、混乱してる。



疑わなかったわけじゃない。
何度も、まるで本当のことを話しているような臨場感を感じた。
王様が、私を見て言った、ウソを言っている瞳じゃないって、私も同じことを王様やこのレンという男の子の瞳を見て感じてた。
それでも、現実ではありえないと、気づかないふりをしてた。




これはお芝居なんだって、バカげた小芝居に付き合わされてるだけなんだって。
だから、早く解放してほしかったし、早く現実に戻りたかった。





ほらやっぱり、って安心したかったんだ。