私は体の傷は大したことないからと、すぐに退院できた。
久しぶりの実家、久しぶりの自分の部屋。
すごく懐かしく感じた。


暖かいお風呂、そしてふかふかのベッド。



お城のお風呂もベッドもずっと高級で広くていいものだったけど、やっぱりこっちの方が落ち着くんだ。







「あー、やっぱいいな」







どさっとベッドに横になりくつろぐ。
目を閉じればいろんなことが頭を巡る。





レンと初めて会った日の事。
王様と話したこと。
騎士のみんなと仲良くなったこと。

悪魔に襲われたこと。
怖かったこと、辛かったこと。





人を、好きだと思ったこと。
でも、報われない思いがあると知ったこと。








いろんなことがあった。
今まで生きてきた長い人生よりずっとずっと短い時間に起きたことなのに。
今までよりずっとずっと濃くて深い時間だったように思う。






見てきたもの。
感じたもの。





まるで夢のよう。








「あ…れ…?」







頬に触れると、そこは確かに濡れていた。
気づいた瞬間から次々にあふれる涙。