「あ、気が付いた?」

「え……?」






目をあけると飛び込んできた人が笑顔で顔を覗き込む。
鼻につく匂いは病院の匂いだ。


でも、なんだか違和感がある。
その人が身にまとうナース服。
確かに見慣れた服だけど、この世界に来てからあまり見たことがなかった。






「ここは…?」

「病院よ。あなた、倒れていたのよ」






私の問いに優しく答えてくれる。
倒れてた…?
確かに、崖から落ちた。
でも、倒れたっていう言い方は変だ。

レンが見ていたからそれを言っているはずだし、それを伝えるなら崖から落ちたと言った方が正確な気がする。





「…みんなは…?」

「みんな?お友達と一緒だったの?悪いけど、あなたが運ばれてきたときはお友達はいなかったわよ?あなたを見つけて119番してくれた人も通りすがりの人だったようだし…」

「そんな……」




どうして…?
頭の中が混乱する。





胸騒ぎがするんだ。








私はベッドから飛び出し窓際に走る。
窓に張り付くようにして外を見た。






「ウソ……」







そこから見える世界は、私の見慣れた景色。
でも、ずっとみてなかった景色。
見たかったはずの、景色。