「なんで、こっちを見ない?」
「…べ、別に。ていうか、湯上りなんだから、恥ずかしいの!」
なんでこんな執拗にそんなことを聞いてくるんだろう。
今日のレンは少しおかしい。
「私、もう疲れたから寝たいの。行ってもいい?」
「…ああ」
逃げるようにしてその場を後にする。
最低だ。
あんなの、何かあったって言っているようなもんじゃない。
きっと気づいただろう、お風呂あがって何かがあったこと。
それが、きっと、セリム相手にということも。
自分の部屋に入り、バタンと扉を閉める。
ズリズリとその場に座り込む。
「…どうしたらいいの…」
私の居場所は、どこにもないのかもしれない。
結局、私のいてもいい場所なんて、この世界にはないんだ。
セリムが言っていることが正論だから、何も言えない。


