「私が、王様のところにですか…?」
「セリム」
「え…」
「私の名前は、セリム」
「セ、セリムさま…」
まっすぐ見つめられると、引き込まれそうになる。
でも、どこか寂しげな瞳をしている気がした。
なにが、そう思わせるのかはわからないけど。
「さまなんて、つけなくていいよ」
「でも、王様ですから…」
「…レンは呼び捨てにするのに」
「え?だって、レンは…」
レンとセリムさまとは立場が全然違う。
それにレンは、一応仲間、だし…。
「レンを呼び捨てにするなら、私の事もセリムって呼んで」
「え…、でも…」
「私がそれでいいって言ってるの。問題ないでしょう?」
「セ…セリム…」
「ん?」
根負けして私がそう呼ぶと、子犬みたいに嬉しそうに笑った。
キレイ、と思っていたけど、かわいい、のかもしれない。
「セ、セリムとレンは仲が悪いんですか?」
「ん?そう見える?」
「わからないけど、…レンはセリムが苦手だって」
「私がなんでも見透かしてしまうから、レンは私が怖いんだよ」
「怖い…?」
レンに怖いものなんて。
いつだって強くて、逞しくて。
俺様で、口が悪くて。
怖いものなしに思えた。
確かに、怖いものがない人間なんて、いないだろう。


