またここから

ああ、アイツ死んだんだ。

朝の緊急全校集会。こんな事を知らされるなんて誰が予想しただろうか。さっきまではギャーギャー騒いでいたうるさい女共は見る影もないし、悪ふざけをしていた男子も静まり返っている。

まあそりゃそうか。

「ーですので、私達は生きることの大切さとは何かを…」

校長のスピーチはいつも長い。しかもつまらないときているから、誰も耳を傾けないのが常である。今日に限ってはさすがに別のようだが。

早く終わらないかな。

体育座りをずっとしているのはお尻が痛くなるし、制服だとスカートにしわがつくから好きじゃない。教師は立っているのだから生徒だって立たせておけばいいのでは、なんて思ったり。

「ー起立。気を付け、礼。以上で全校集会を終わります。各自教室に戻って下さい」

途端、泣き崩れる声。あの子は確か1年の…アイツのことが、好きだった子。だった、って過去形にしていいのだろうか。まだ気持ちは揺らいでいないのか気になるものだ。うるさい女共が駆け寄って必死に励ましている。けれどあの子の涙は留まることを知らずに流れ続ける。友情と愛情は紙一重、とはよくいったものだ。似ているけれど全くの別物なのだ、結局のところは。

「…ねえ、大丈夫?」

リコが声をかけてくる。彼女とは小学校からの長い付き合いがあり、選んだ高校も偶然被って不思議な運命を感じる。まあ所謂親友というもので、心配症なのも相変わらずだ。

「何が?」

私のすました態度を怪訝に思ったのか、リコが眉を顰める。この返事はさすがにそっけなさすぎたか。私は慌てて訂正をする。

「えと、ごめん、心配してくれてるんでしょ?ありがとね」
「そうじゃなくって今の話。ちゃんと聞いてたの?彼が亡くなった、って…」
「…うん、わかってるよ。だから大丈夫だってば」
「本当に?本当にわかってるの?」

こんなに食い下がるリコは久々に見た。そんなに心配なのか、この状況が。
さっきのあの子が先生に連れられて保健室へ行く。支え無しでは立てないようで、相当心にダメージを負ったのだろう。周りの生徒達も顔色が優れない。当然だ、自分の学校でそんな事が起きれば。

そうだよ、死んだんだ。アイツは、彼は。

私の彼氏のナギトは、死んだのだ。