「あれ、麻美?まだアップだけどペースあげるの?」




「え、あたし速かった?」



「少し速くなったから」



「そ、そっか、ごめん」




「ううん、頑張って追いつく」




そんなこと言って、息一つ荒げないであたしの隣を一定にルリ子ちゃんが走るから



あたしは自分が速くなっていることに気がつかなかったんだよ




なんで急いじゃったんだろう




そっか、洸紀が



近づいて…





「のろま」




ビクッと




肩が反応する




「は?洸紀誰に言ってんの」



洸紀の友達が不思議そうにそう言っているのが聞こえる



洸紀はあたし達の少し離れて隣まで追い上げてきて



けれど決してこちらを向いたわけでも



名前を呼ばれたわけでもない



だけど




「別に」




そう、答える洸紀の顔が



少しニヤついてる洸紀の顔が



見なくてもわかる



あたしに言ったんだって



「……」



それでも、あたしは知らないふりをして



洸紀もそのまま、走り去ってしまった





「麻美、顔赤いけど大丈夫?」



「え!うそ!」



「うん、すっごい頬タコみたい」



「さ、さっき少しペース上げちゃったから…」




違う



「あんま無理しなくていいからね?」



「うん!」





違うでしょ



赤くなったのは…




あんなことで



嬉しいとか



思ってしまう




すぐ赤くなってしまう



こんな自分が本当に嫌だ



あっちは何とも思ってないのに



あたしだけ



こんな、舞い上がっちゃって




…馬鹿みたいじゃん