さすがにおかしいと気付き始めた彩希は

窓を手にかけ開け放った。



「あのー、ちょっと……いいですかー」



室内に入ろとしたとき、彼氏が小声で

呼び掛けていた。



「おい……それって不法侵入ってやつじゃ

ないのか。ヤバイって……もし死んでたり

したら俺らの責任とかされたらさ……」



「そうだよね……でもどうしようか……

やっぱり動かないよ……あの人ら……」



「隣の家のチャイム鳴らそうぜ。

そして、たいへんです。横の家が! と

か叫んで逃げようや」



「それいいねー! あんなオヤジのために

捕まりたくないもんね。鞄のお礼に呼ん

であげよー! もう売っちゃったけど」



「鞄のお礼に? 鞄てなんだよ?」



「あ。なんでもなーい! さぁ押しに行

くよ!」



「あ。待った待った。やっぱり逃げよう

ぜ。下手に絡むとろくな事ないだろ。

どうせ数日したら、誰かが通報してくれ

るだろうしな」



「そっかぁ。関わるとこっちまで迷惑来

たらイヤだもんね。じゃあ。逃げよー!」