3月12日21:12

彩希は彼氏と一緒に、義雄の自宅前にい

るのだ。悪巧みを実行するために。



「行こう行こう! キャハハハハハ」



「ほんとお前、悪いやつだな」



「お金儲けお金儲け!  さあ、チャイム

押すよ」



【ピンポーン、ピンポーン】



「あれ。出ないね。電気ついてるのに。

もしかして、勘づいて出れないとか!

キャハハハハハ」



「おい、庭の窓空いてるぞ。覗いてみる

か?」



「いいねー! 覗こう! 覗こう!」



そこには食卓を囲む四人の姿があった。



「あれ。いるじゃん。なんで動かないん

だか……」



「おい、なんかおかしくないか?」



「ん? なにが?」



「いや、誰もまったく動いてないぞ?」



「えー?」



「おい、あの子の顔色見てみろよ……

なんかおかしいぞ……これ……」



「呼んでみよっか!

おーい! ヤッホー!」



呼び掛けにも誰も身動きすらしない、幸

せそうに食卓を囲む家庭がそこにはあっ

たのである。