雪は気づいてはいなかったが、少し離れ

た場所からは、雪の姿を目を離さずに見

つめている一つの姿があったのだ。



消防署から出てくる時間を見計らい、雪

から距離を保ちながら、後を追いかける

姿。



「あの人に間違いない……目立つ体系して

るから、すぐに分かったよ。

顔も整ったいい男じゃないか。

しかし……あの人がね……

いったい何の為に、あんなことをしたん

だか……」



ポツリとそう呟くと、離れずまた距離を

保ちながらついて行く。



しかし、声はかけず、ただずっと雪を見

つめているだけだった。





後に、この人物から雪は、声をかけられ

る日が来ることになる。



しかしそれは、悲しい想い出を呼び起こ

してしまい、心を揺さぶられてしまう結

果となってしまうのである。