ボーッとしていたが 病室に戻らなければと思い中庭を離れた。

(さっきの子何で走って逃げたんだろ。俺そんなに悪いやつに見えたのかな?)

何て死んだ婚約者のことなんてすっかり忘れて考え込んでいた。

「久遠さん。ここにいらしたんですか。」

ふと、名前を呼ばれた方をむくと看護師が立っていた。

「検温しますよ。お昼には、退院できますから。」

看護師のあとに続き、病室に戻る。

その途中、ふと見た談話室にさっきの少女がいた。

「あっ」

「どうされたんですか?」

思わず立ち止まった俺に看護師は不思議そうに近づいてくる。

「あぁ、桜実さんとお孫さんか。」

看護師さんは優しい笑顔でそう呟いた。

「あの子、とってもいい子なんだよね。毎週欠かさずお見舞いに来て。桜実さんも嬉しいだろうな。」