正義のヒーロー





「はい、二十球、めっ!」

カキーンとお決まりの音が鳴って、ボールはホームランを表す的の真ん中に当たった。
叫んだ通り、今ので二十球連続。
各バッターボックスで数えるなら八十球連続だ。

まさしく夜霧はホームラン王。
信じられないことに、八十球全部、ホームランを表す的の真ん中に当たっている。
信じられないが、目の前で起こっているので信じるしかない。
これがテレビとかだったら、確実に信じてないだろう。

左の速度八十キロから始まった伝説は、残すところ速度百六十キロのみとなった。

「朝日奈くん」
速度百三十キロのバッターボックスから夜霧が出てきた。
顔がいやらしく笑う。

この数時間で分かったのだが、こういう笑い方をする時は、なにか企んでる時だ。
ニカッと無邪気に笑う時は、嬉しい時とか、そういう子どもが親に褒めて貰いたいみたいな時。
それ以外は一点の曇りもないような、清々しい笑い方をする。


とにかく、今は嫌な予感しかしない。