「よぉ、朝日奈くん」
どう声を掛けたらいいか分からなくて困っていたら、夜霧の方から話し掛けられた。
「俺の後、追ってきちゃったんだ」
いやらしく笑うのがムカつく。
今になって、放っておいて帰ればよかったと思ってきた。
「バッティングセンター行くんでしょ?」
「おう、そうだったな」
夜霧が立ち上がるのを確認して、俺は先を歩く。
「…の、その前に。どっかの公園で、猫にゃん逃がしていいか?」
「いいですよ…」
引かれ掛けた野良ネコを助けるなんて、なんてベタなヒーローなのだろうか。
緊張とか安堵とか、少しの喜びとか…全部一緒にため息と共に流しきった。
