ーside◇◇◇ー

城の廊下を全速力で走った。

きっと姫様は誤解されてる。

…俺たちが固まっていたのは悪いものを聞かせたからだって。…逆なんだ。良いものを聞いて感動していただけなんだ。

姫様の気持ちなら…きっと一人になりたい筈。だとしたら…中庭。

そう思い、中庭へ向かってるとベンチに座ってる女性──姫様が居た。

速度を落とし姫様の方へ歩いてると姫様は肩を揺らしていた。──泣いてる?

その姿は少し力を加えれば直ぐに壊れそうで、守ってあげたい──そんな気持ちが俺の心に現れた。……分かった。ピアノが自分の表現方法で、表現方法を否定されたように感じたから今、こうして泣いてる、と。

後で団長に進言した方が良いな。姫様が自由にピアノを弾ける環境を作るべきだ、と。

後、姫様を慰め方か…

…やってみるしかないか。

「姫様。」俺が声を掛けると大きく肩を揺らした後、姫様はゆっくり顔を上げて、

「…ユウキさん。」と小さい声で言った。