昔っからそう。お母さんの行動は突拍子も無くて、みんなを混乱させる。

でも、ナイショにし続ける理由がわからないし加納さんとか運転手さんとか、この矛盾に気づいているハズなのに顔色1つ変えない。

これは…

「計画的犯罪?」

「……はい?」

芳井が意味がわからないと言いたげな顔でこちらを向いた。




車はだんだんと都心から離れていく。一体どこに向かっているのか──。全く検討がつかなかった。

「──様、お嬢様!」

「ん〜…、ふぇ?」

芳井の声で眠りから覚めたあたしは、外がすでに真っ暗になっていることに気づいた。時刻は夜の7時。

「…ちょ、どこに来てるの!?夜には希美だって来るし、だいたい何で…」

あたしが騒いでいたが、それはお母さんの一言で止まった。

「ほら、着いたわよ。『目的地』に。」

「え!?」

や、やっと!?

「目的地って…ここ?」

あたしがそうやって顔をひきつらせながら尋ねると、お母さんは満足そうに頷いた。車から降りて辺りを見渡す。

「い、田舎じゃん!」

そこは何もない、ただ田んぼが広がっている『田舎』だった。
目の前に立っている小さな2つの家が辺りに辺りに馴染んでいない──。そんな場所。

「ねぇ…ここが、何?」

「ふふ、じきにわかるわよ。じゃあ中に入りましょ。」

お母さんは鞄から1つの小さな鍵を取り出して、2つの内のひとつの扉を開けた。

な、何で鍵を持ってるの!?

もう私の頭の中は“?”でいっぱいだった。

「ほら、入りなさいよ。芳井君も♪」

お母さんに促されて、あたしたち2人は家の中に入っていった。初めて見たときの感想は──


「…ちっちゃ!」

だった。自分の家の何倍も小さくて、あたしはかなりビックリした。

「まさか…ここ、別荘!?」

「う〜ん、おしいわね。かなり近いけど…ここは、」


次の言葉は、あたしが今までずっと聞きたかった『このお出掛けの目的』だった。

でも───

それはあたしの思ってもいなかった答えだった。





「──あなたたち2人の『新しい家』よ♪」


お母さんの発言に、あたしと芳井は固まってしまった…