「私のこと、なんて呼んでくれる?」



ふわりと笑う桜井は、名字の通り桜の妖精みたいだった。


思わず見とれてしまうが、ハッと我にかえる。



「さ、桜井でいいだろ…?」



「だーめ!せめて下の名前にしてよ」



「春香…?」



そう呟くと、春香は花が綻ぶように笑った。



「うん。いいかも」



「な、なんだそれ…」



「じゃあね、まこちゃん!」



そう元気よく手を振りながら、春香は走っていった。




その小さな背中を見えなくなるまで見送ったオレの頬は、桜のように薄いピンクに染まっていた。