「じゃ、いってきます」




教科書も入ってない軽いカバンを肩に提げ、母さんにそう言った。






「いってらっしゃい、誠」






少し心配そうな表情でオレを見送ってくれた。



こんな普通の挨拶なんて、もうできないと思ってた。



家族に愛されてた……オレは独りじゃない。



まだオレにやれることがある。



そう考え、オレは学校に行くことを決めた。



もう秋も終わりに近づき、冬がやって来ようとしてる。



春香と過ごせなかった季節はオレの胸を締め付けるけど、立ち止まっていられないって気づけたから。





学校に着くと、やっぱり皆オレを見てくる。



無理もない。



ただでさえ嫌な噂でオレのことは学校中知れ渡っているのに、不登校からまた学校に来たとなれば好奇な目で見られるに決まってる。



でもここで負けたらだめだ。



オレは周りを気にせず教室へ向かった。