「お兄ちゃんは、ちゃんと愛されてるよ」
「は…?」
愛されてる?
オレが?
「ずっとずっと、お母さんもお父さんも心配してたんだよ?“どうやったら心を開いてくれるのか”って。でも…今さらそんな器用なことできなくて、ずっと悩んでたんだから」
衝撃のカミングアウトに、オレはわけがわからなかった。
「ま、待てよ……だってずっと、父さんも母さんも心愛ばっか見てて……オレなんかいらないんだって……」
オレがそこまで言うと、母さんはオレから離れ目をまっすぐ見て言った。
「自分の子供をいらないなんて親、いないわ。もしいてたとしても…そんなの親子じゃない」
「そうだぞ誠」
今度は父さんがオレに近づき、肩に手を置いた。
「お前を愛してなかったら毎日ご飯作ったり、服を洗濯したり、頑張って心を開かせようと話しかけたりしない」
「……っ」
今まで愛のないご飯を食べてた。
たまにする会話にも、温もりがなかった。
でもそれは、オレが勝手に距離を置いてたからなんだ。
「お兄ちゃんは、独りじゃないよ」
“独りじゃない”
その言葉を聞くと、オレの視界は涙で歪んでいった。
愛されていた。
必要とされていた。
こんなに近くにいたのに、なんで気づかなかったんだろう。
「ごめっ……オレ…」
嗚咽でまともに喋れないオレを、母さんが優しく抱きしめてくれた。
あぁ…家族の愛って、こんなに暖かいんだ。