オレは春香が死んだ道路で出会った女性と、近くの喫茶店に来ていた。
容姿からして社会人…だと思う。
年は二十前半か?
目の前に置かれた水を一口飲んだ。
すると、女性の方から口を開いた。
「私、中学校の教師をしています。児玉です」
「オレは池田…です」
こんなに若いのに教師だったとは…。
でも真面目そうな感じだし、納得する。
オレはさっそく気になることを聞いてみようとしたが、先に児玉さんから口を開いた。
「さっきも言いましたけど、私…春香さんの“事故現場”をたまたま目撃したんです…」
「ちょ、待ってください…!」
それだ。
さっきもその言葉がひっかかっていた。
「春香は………自殺じゃ…?」
そう呟くと、児玉さんは静かに首を横に振った。
「自殺じゃありません。自殺する人が普通浴衣なんか着ませんよ」
春香、浴衣着てたんだ…。
でも…自殺じゃないって?
春香は自殺じゃなかった。
そう思うだけでオレの心はなんだか軽くなっていく気がした。