オレは席を立ち上がると、教室を出た。
向かった先は屋上。
向かってる途中授業が始まるチャイムが鳴り響いたが、教室に戻ることなく屋上についた。
いつもの錆びた扉を開けると、ぶわっと風が吹いた。
『あ、まこちゃん!遅いよ〜』
「春香…」
春香だと思ったそれは、オレの作り出した幻覚で。
あっという間に消えて、虚しさだけがオレに残った。
「はは…馬鹿みてぇ…」
もう春香は、この世にいないのに。
まだ理解できてないのか?
もう十分わかっただろ。
無邪気に笑うあの笑顔も
少し意地悪して拗ねるあの表情も
弾みながら呼ぶあの声も
細くすぐ折れそうな体も
もう、どこにもない。