「圭先輩が春香のこと好きって…わかってるけどっ……好きなもんは好きなんです…っ!!」
嗚咽混じりのつぼみちゃんの訴えに、俺は言葉を発せなかった。
ずっと近くにいた存在。
今までどんな気持ちで、俺と接してきた?
どんな気持ちで、春香ちゃんと友達やってた?
好きな人が自分じゃなくて友達に恋してるとか、結構キツいよ。
「圭せんぱ…っ」
気づくと俺は、つぼみちゃんの唇と自分の唇を重ねていた。
優しい、触れるだけのキス。
そっと唇を離すと、つぼみちゃんは腰が抜けたのか地面に流れるように膝をついた。
「ごめん」
ぽそっとそう言うと、俺はつぼみちゃんに背を向け歩き出した。
「それは……私の気持ちに対してですか…?」
「……わかんねぇや」
もう、わからないんだ。
俺は誰が好きだったのか。
楽しかった日常が、壊れていく音がした。