「あの…」



もんもんと頭を抱えていると、相手の方から遠慮がちに声をかけられた。



「なんだよ…オレもう帰りたいんだけど…」



「それはいいんだけど…その…」



こいつは先輩に敬語を使うということを知らないのだろうか。


まぁいいか…とため息をつく。


考えるのは苦手だ。



「なんだ?」



「えっと…出口どこかな?」



「は?」



それはオレの今日一番の間抜けな声だった気がする。






――これが、オレと春香の出会いだった。