㈱恋人屋 ONCE!

「…。」
私は流矢さんの服をぎゅっと掴み、後ろに隠れていた。
「ん?どうしたの?」
「えっと…人に見られたら、ちょっとな~って…。」
「大丈夫。意外と見られてるようで、見られてないから。」
「そ、そうですか…。」
「だから、ほら。」
流矢さんは私の手をそっと、でも、ぎゅっと握った。
「もっと堂々としてみない?『私達、付き合ってます!』くらいの気持ちでさ。」
「…そうですねっ!」
次からの仕事にも使えそうな、大事なことを教わった気がする。…さすがは業界人。やっぱり、人を引き付けるのが上手だ。
「!」
突然、流矢さんが走り出した。
「マズい…。」
「どうしたんですか!?」
「追手が来てる!」