「歩け!」

低い声で命令されるが、ほぼ引きずられている状態の私に従う意思はない。
それでも関係なく。
木目の美しい門を越え、石の敷き詰められた道を行き、抱えあげられ靴を脱がされる。
米俵よろしく抱えられ、どこかに運ばれ、ついには落とされた。

痛い。

私をここまで連れてきた人達が数歩下がって膝をつく。
車酔いの上、人酔いなるものをした私は、できるだけ小さく丸まって堪える。

「遅ぇぞお前ら、いつまで待たせんだ!」

「すいません組長。なかなか捕まりませんで……」

「もういい。この女は祝前(いわいさき)家当主がご所望だ。連れていけ」

「へいっ!」

連れられてきた時と同様、乱暴に担がれ車に乗せられる。
私が抵抗しないとふんだらしく、今度は過剰なまでの拘束はされなかった。
重い沈黙。
聞こえるのは車のエンジン音だけ。

今なら不意をついて逃げられるかもしれない。
でもどうやって。

警察に連行される犯罪者のように、左右を黒服の筋肉質な男性に挟まれ、現状打破の一手を模索する。