まあ、私には関係のないことだけど。

「……隆雄様は今、反抗期を迎えているのですよ」

「反抗期、ですか」

「ええ。使用人は皆、隆雄様が大好きだと聞いて怒り出しましたから。………落ち着いたらすぐ、機嫌をなおすと思います」

ご安心を、と営業スマイルを作る。
それに、この三日間は御曹司が使用人の大切さ、自分を慕う者がいる幸せに気付くいい機会です。

「そうか。隆雄は幼いころに母親を亡くしていてね、寂しい思いをさせていることは知っていた。……息子を頼みます」

エセ爽やかな笑みひとつ見せて、当主は立ち上がる。

「すまないが、仕事を抜けてきていてね。もう戻らなくてはならない」

「はい、行ってらっしゃいませ」

私は先回りして応接室の扉を開け、当主の背を見送った。