優しいぬくもりに包まれながら、頭を撫でられた感触で目を覚ました。

「………おはよ」

隣からかけられた甘い声に微笑み返す。

「おはようございます、隆雄様」

すると、顔中にキスが降ってきた。
戯れるように額、まぶた、頬と続く。
最後に唇に触れると、より強く抱きしめてから隆雄様はベッドを出た。
離れていく熱に寂しさを覚える。
じっと背中を見つめていると。

「そんなもの欲しそうな顔をするな。………襲いたくなる」

振り向きざまのその言葉に、顔に熱が集まるのを感じた。
もう一度唇が触れ合うと、リップ音を残して今度こそ隆雄様は離れていった。
恥ずかしさから頭までシーツを被る。
もの欲しそうな顔なんて、してないもん。

「まったく、初々しいな。いい加減慣れろよ」

「だって……あっ」

シーツをはがされ、身を隠せるものはなくなる。
目の前には、スーツをぴしっと着こなした隆雄様。
出会ったころに比べると精悍さに磨きがかかった。
今では立派な社会人の顔だ。
流石、将来大企業の社長になる男。
一瞬見とれていたが、すぐに彼に背を向ける。

「何恥ずかしがってんの。俺たち、夫婦だろーが」

「そうだけど………」

「だけど何? そんなに俺のこと好きなの?」

「………すき、です」

「ふっ、素直でよろしい」

「あっ……」

あごをくいと上向けられて、すぐさま唇が塞がれる。
さっきまでのような軽いものじゃなくて、深く、長く。
飲みきれなかった唾液がこぼれても、それは止まらない。

「んんー」

息が苦しくなって隆雄様の腕を叩いて訴えると、ゆっくりと離れる。
名残惜しむように私と隆雄様を銀糸が繋ぎ、やがてぷつりと切れた。

「呼吸は鼻でするって教えただろ」

「ごめんなさい」

「怒ってない。そんな不器用なところもかわいいよ」

「もうっ」

後ろから抱きしめられ、甘い声で甘い言葉をささやく隆雄様がとにかく恥ずかしい。
体温が上がりっぱなしだ。