それからも、質問攻めは続き。

「じゃあ、寝てないってこと?」

「いいえ、先にわたくしが寝てしまって、隆雄様にベッドに運んでいただいたのですわ」

余計なことまで口に出していた。

「ベッドでやってたんじゃなかったの!?」

「じゃあどこでやってたのよー!?」

「そりゃ腰も痛くなるわ」

「…………」

何を言っているんだ、彼女たちは。
ベッドから落ちて腰を打ったことは黙っておこう。
寝相が悪いみたいで恥ずかしい。

「はい、そこまで」

「ミスズさん!」

「昼休みはとっくに終わってますよ。すぐ仕事に戻りなさい」

「はーい」

突如現れたメイド頭ミスズさんの鶴の一声で、三人のメイドは食堂を出て行った。

「麻里奈さん」

「はいっ」

三人の背中を見送っていると、ミスズさんに呼ばれ、姿勢を正す。

「使用人が仕えるべき主と一夜過ごすことは、許されることではありません」

「……はい」

「その上遅刻など、もってのほかです」

「………はい」

ミスズさんのいうことは正しい。

「本来なら、謹慎や解雇を言い渡すところですが……」

私は小さくなって話を聞く。
どんな処分でも受け入れましょう。

「あなたは本来、隆雄様の婚約者候補として来たのでしたね。あまりにも立派に働いてくれるものだから忘れていたわ」

今、褒められた?
顔を上げると、ミスズさんはしわを深くして優しく微笑む。

「初めてですからね、今回は大目に見ましょう」

つまり、処分はなし、と。

「ありがとうございます」

私は深く頭を下げた。

「ですが、次はないですよ。隆雄様のお部屋で一夜過ごすことは許可しますが、遅刻は処罰の対象です」

「はい、頑張ります」