「よし。我ながらいい仕事をした」

私を上から下まで見て、満足そうに頷く。
違和感を感じる首に手を当てると、指先に固いものが触れた。

「何ですか、これ」

「ご主人様の話を聞いてなかったのかい、お前は俺のペットだろ。語尾に『ワン』をつけろ」

「あんたの恥ずかしい趣味なんて聞いてないの」

「あっれー? 祝前が草薙に逆らっていいのかなー? お父様や従業員がこの先路頭に迷うことになってもいいんだー」

正直、祝前がどうなっても知ったこっちゃないと思う。
けれどそこで働く罪なき人の仕事や生活を奪ったとしても、私はその責任をとれない。
わざとらしく言ってくる御曹司に、怒りで震える拳を強く握って耐える。

「………これは何のマネかしら、ご主人様ワン」

「うーん、想像とちがうなぁ。……まあいいや」

こんな恥ずかしいことやらせといて、想像と違うって、なんのつもりよ。
親が力を持っているのをいいことに、デカイ顔をする御曹司。
こんな腹立つやつ、私一人なら殴ってやったのに。

「それは俺のぺットの証、犬用の首輪さ。今の君にピッタリだろう」

「おほほほほ……御冗談を」

「この俺が冗談でこんなことをするとでも?」

「人権を主張する!」

「諦めろ、貴様は俺のおもちゃだ。俺を楽しませることだけを考えろ」

高圧的に言い放つ。
己が支配者であるのだというオーラをまとっている彼。

「そうすれば、祝前にちょっとくらい仕事を回してやるよ」

鼻で笑った彼を見るのは二度目になる。
なぜ全く関係のない私が、祝前の為に恥をさらさなければならない。
………理不尽だ。