ちょっとだけ不満だなんて心の奥底で思いながら、あたしも自分のお弁当にそっと箸を伸ばした。自分が作ったおかずを口に入れて、味わいながら食べる。
お弁当のおかずを味見して、絶対不味くはないはずなんだけどな、なんて思いながら、あたしはもう一回隣に居る矢沢君にチラリと目を向けた。
「何?」
すると、不意にこっちへ顔を向けた矢沢君と必然的にパチっと視線が重なってしまった。
「あ。い、いや、……矢沢君何も言わないから、美味しいのかなあと思って」
「…………」
あたしが矢沢君の表情を伺いながら小さくそう言うと、矢沢君はじっとあたしを見つめて来た。
食べてくれるのは嬉しいけれど、感想のひとつくらいは聞いてみたいと思う。
あたしがじっと矢沢君を見つめ返すと、矢沢君は何故か「はあ」と小さな溜め息を付いて、また一つ手作りの卵焼きにスッと箸を伸ばした。

