そんな矢沢君にチラチラ視線を向けながら帰り道を歩いていると、
「………あ、そうだ」
「え?」
不意に何かを思い出したらしい矢沢君が、小さな声でそう言った。
「な、何?」
「…………」
あたしが問いかけると矢沢君はいきなり躊躇ったように口を閉じてしまう。あたしはそんな矢沢君にちょこっとだけ首を傾げる。
「矢沢君?」
あたしがもう一度問いなおすと矢沢君はこっちに視線を向けて、そっと口を開いた。
「……、お前さ」
「うん」
「今週の土曜日、空いてるか」
「えっ」
いきなり過ぎた予想外な言葉に、あたしは一瞬心臓がドキリと跳ね上がってしまった。

