「矢沢君…!」
その後、あたしは矢沢君が待っていると言う校門前へと足早に向かった。
「……案外早かったな」
少し息を切らせながら校門前に辿り着くと、携帯を弄っていた矢沢君がこっちにそっと振り向いて小さな声でそう言った。
「あ、うん。ちゃんと久瀬先輩に会って、お話して来たよ」
「そうか」
「うん」
あたしが頷くと目の前の矢沢君は「帰るぞ」とそれだけ返して来て、あたしの前をスタスタと歩いて行ってしまった。
「待ってよ、矢沢君」
「遅い。おいてくぞ」
「……、意地悪」
「……………」
あたしが不満そうにそう言うと、目の前の矢沢君は眉間にギュッと皺を寄せた。
「……怒った?」
「別に」
「矢沢君があたしを置いて先に行くから悪いんだよ?」
「何だそれ」

