矢沢君のその声にチラリと腕時計を確認すると、時計の針は21時前を差していた。
「此処じゃなんだから、俺の家で話したい」
「…えっ」
「でも親が心配するなら今日はもう帰れ。もうすぐ21時になる」
「…だ、大丈夫だよ…っ、あたし友達の由希と会って来るって言ったし…、お母さん由希の事は凄く信頼してるから…」
「…ああ、あのいつもお前の隣に居る友達の事か」
「うん、」
あたしがそう言うと、矢沢君は「本当に大丈夫なんだな?」ともう一回問い掛けて来て、あたしは不安ながらもそれにコクンと頷いた。
その後、二人で電車に乗り込み二度目となる矢沢君の家へと向かった。あたしは不安と焦りと戸惑いやらで頭の中がグルグルしていて、たったひと駅だけだと言うのに凄く長い時間電車に揺られている気分だった。
「お邪魔します、」
小声でそう言うと、矢沢君は不意に「これで濡れたとこ拭け」とタオルを手渡して来てくれた。
矢沢君も頭をガシガシと拭いていて、そんな仕草につい見とれてしまっていると、不意に「お前も服着替えた方が良いんじゃねえの?」と言われた。
「え、でも、こんなのすぐ乾く…」
「バカ、風邪引くだろ。ちょっと待ってろ」

