ヴァルラム王国の首都ヴァラート。

そこは整然と並ぶ石造りの街だ。武勇の国と謳われる国の首都だけあって、街全体がいかめしい城壁に囲まれている。

ヴァラートに入った旅人は、まずその眺めに驚かされる。

街中いたるところで、真紅の旗が颯爽と風にたなびくその眺めに。

真紅は強さの象徴。ヴァルラムの国色であるため、街ゆく人々も皆真紅の衣に身を包んでいる。リュティアはいつか読んだ本の一説を思い出した。

―「灰色と真紅の街、それが王都ヴァラート」。

街は「槍の広場」と呼ばれる中央広場を中心に放射状に道が走り、円の形をしている。その円は大きく東西南北四つの区に分けられている。

北区が王城と貴族たちの住まい、専属の商人たちの店が立ち並ぶ区、東区が大神殿と一般の人々の居住区、門のある南区が商業区、そして西区は放牧区と呼ばれている。そこにはその名の通り広大な牧草地が広がり、たくましい軍馬が数多く放牧されている。ヴァルラムは軍馬の国だからである。

ヴァルラムは灌木が多く農業に向かない土地柄だが、軍馬と農作物を交換することで栄えているのだ。良質な軍
馬は家三軒ほどの値段がつくこともあるという。

順調にヴァラート入りした一行は、ジョルデが情報収集に出かけている間、「槍の広場」で休憩をとっていた。

槍の広場とは王権の象徴である巨大な槍が突き立った、ヴァラートの中心にある広場だ。大勢の人が、たそがれの光の中歓談したり足を休めたり商売をしたりしている中、フレイアとリュティアははしゃぎまわっていた。