「ん―――?」

しかし振り返った顔は大人の顔で、少年とは似ても似つかなかった。リュティアは「い、いえ、なんでも…」と口ごもると逃げるようにその場を離れた。リュティアはひどく気落ちした。そう簡単にみつかるはずもないのにこうも落ち込む自分がわからなかった。

二人は関所の役人に少年のことを尋ねてみた。すると…

「そんな少年なら二日前から開門を待つ人の中にいたなぁ。少年の一人旅は珍しいから覚えているよ」

「本当ですか?」

リュティアの胸は静かな期待に高鳴った。

「ど…どこに宿をとっているかわかりますか?」

「いやいや、ついさっき、二刻くらい前に許可が下りて国境を越えて行ったよ」

「え…………」

少年の足は速い。二刻も前ならば、追ってもきっと追い付けない。

がっくりと肩を落として宿に帰ったリュティアの背を、ジョルデが励ますように叩いて言った。

「大丈夫。旅人ならお金を稼ぎながらでないと長旅はできっこない。仕事と言えば王都ヴァラートだ。そこで必ず何らかの仕事に就くはずだから、今度こそそこで追いつけるさ」

「そうですね…聖具を三つそろえるには、なんにせよヴァラートまで行かなければなりません。案内していただけますか?」

「ああ、もちろん!」

かくしてリュティアたちは、少年と聖具を追い、王都ヴァラートを目指して今しばらくフレイアたちと行動を共にすることとなった。