翌日は一日、灌木の悪路を行きながら、皆言葉少なに過ごした。

そして夕食が終ると、シアが意を決したように顔を上げて切り出した。

「昨日、すべて打ち明けると言ったわよね。約束通り…話すわ。長くなるけど、聞いてくれる?」

たき火の灯りが照らすシアの顔は、緊張のためか少々強張って見えた。

それからしばしの沈黙があった。

リュティアも、ジョルデもザイドも、そしてカイも、誰も先を促そうとはしなかった。シアはふうとひとつ息をつくと、リュティアの目をまっすぐに見て言った。

「私の本当の名前はフレイア・ホルエンヴェルグ・ヴァルラム。ヴァルラムの…世継ぎの王女よ」

隣のリュティアが息を飲んだのがわかった。

カイも驚いたが、何かの冗談かと思う気持ちの方が強かった。

シアが…くだけた口調で話すこのわんぱく少女が、世継ぎの王女だって?

まさか。

「きっと信じられないと思うわ。わかってる。私ったら、こんなだもの。でも信じてほしい。嘘偽りなく、本当のことよ。ジョルデは私の教育係兼剣の師匠」

「………!」

リュティアは驚きすぎて言葉もないようだ。

それはすなわち、シアの言葉を信じたということだった。

「そして私の妹パールは、パールヴァティー第二王女のこと」

ヴァルラムの王家の面々の名前は、カイの記憶にもあった。

第一王女フレイア、第二王女パールヴァティー。

シアの言うことがもし本当なら、ヴァルラムは今王家を継ぐべき唯一の存在をこんな危険な旅に送り出しているということになる。

そんなことがありうるだろうか。

カイはまだ信じられずに、ただシアの顔をみつめた。