「本当にシアとジョルデさんは仲がいいんですね」

もうそろそろカイたちも帰ってくるだろうという頃、リュティアがほんわかした表情でそう言うと、シアはぎょっと目を剥いた。

「ええっ!? 私とジョルデの仲が、いい!? どうしたらそう見えるのよっ」

「姉妹…って、こんな感じなのかなって。私には姉も妹もいなかったから、勝手な想像なんですけど」

「ジョルデと姉妹!? ナイナイ、アイツは暴力師匠で十分よ。私にはパールがいるし!」

「それでも、憧れます。言いたいことを言い合える関係って、すばらしいから。ジョルデさんみたいな強くて優しい女性が、お姉さんだったらなぁって、思って…」

リュティアがほんのり頬を染めてしみじみとそう言うので、シアはすっかり軽口も悪口も封印されてしまった。

「ああ~リュティア、あなたって本当に、純真無垢が服を着て歩いているような人ね! 私、あなたが羨ましい、憧れるわ。どうしたらそんな風になれるの?」

そう言われても、リュティアは小首をかしげるしかない。

「そんなふう?」

「それよ! そんなふう! も~っ自覚がないんだから」

「ふふ、私、シアにも憧れているんですよ」

「…は?」

「シアはなんていうか、とっても心が強い人だから」

「私の心が…強い?」

シアがあまりにも意表を突かれたような顔をするので、逆にリュティアが意表を突かれた。

「…シア?」

何か言ってはいけないことを言ったような、そんな間があった。

シアは眉根を寄せ、考え込むようにして呟く。

「私の心が、強い…。買い被りだわ、私は…」

シアは何かを言いかけて、突然それを飲みこむ。

そしてがばりと顔を上げた。

「…そうよ! 私は強いわ! 見ててごらんなさい!」

突然ずかずかと力強く歩き出したシアを、リュティアはとまどいながら追いかける。