リュティアの体に覆いかぶさるように少年の腕がのび、リュティアの肩を押さえつけている。

喉元にひやりとした感触があり、リュティアははっと息を吸い込む。剣だ。少年は銀の剣をリュティアの喉にぴたりとあてがっているのだ。

少年は低く押し殺した声でこう言った。

「俺は魔月王、猛き竜(グラン・ヴァイツ)。今からお前を殺し、魔月最強の力“闇の力”を手に入れる」
リュティアの中で、時が止まった。


――え…?


「え……? あなたが、猛き竜(グラン・ヴァイツ)…?」


番人の言ったことが脳裏をよぎる。

確か、魔月たちの王であり、これから聖乙女が戦わなければならない相手。彼より先に“光の人”をみつけ、17の誕生日の日に闇の叙情詩を発動されないようにしなければならない。自分はそれを必ず成し遂げて見せる、と番人と約束したのだ。


それなのにこの人が、この人が猛き竜(グラン・ヴァイツ)だというのか!?