彼女は絵を描いていた。

「これって今日の数学の授業中?すごいリアル。見てるだけで授業受けてる感覚になる。」

その絵は彼女の席から見える教室の風景だった。実に細かく正確に描かれている。

「コンクールに出そうと思って。」

「えっ?」

「美術部なの、私。」

そんな話は初めて聞いた。

「全然知らなかった。」

「まぁ、あってないような部活だから。」

確かに美術部があるというのも今初めて知った。それに現在美術室には彼女しかいない。

「通りで絵が上手いわけだ。」

何でもできてうらやましいと思わず呟くと彼女は顔をしかめた。

そしてうつむいて息を吹くと、決心したかのように顔を上げ俺の顔を見た。

「立花君は私のこと気になるって言ったよね。」

「えっまあ、うん。」

確かに言ったが改めて確認されると気恥ずかしい。

「知りたい?私のこと。」