「わん!(愛ちゃん!)」




風が通りぬける草むらの中を、これでもかってほど尻尾を振って走る僕がいる。



いつだって僕は愛ちゃんに対しては、一生懸命だ。



1番好きなんだ。




ご飯をくれるお母さんよりも、散歩に連れて行ってくれるお父さんよりも、好きなんだ。



なんでだろう。


ご飯も散歩も大好きなのに。




でも、それよりも愛ちゃんが1番に好きだ。



好きなんだ。




「けん〜♪沢山走ったねッ。お家帰ろっか。」


「わん!」




愛ちゃんとなら通じ合える。


お母さんでもなくてお父さんでもない、


愛ちゃんとなら、僕のことも好きなでいられる気がするんだ。




僕は夕日が照らす草むらの道を、愛ちゃんに着いて歩いた。