すっと立ち上がって、椅子をそっと押すと、置いてあったカバンを握りしめ玄関へと続くドアのノブを握った。




「わん!」



行かないで。外に出なければいいよ。



行かないで。



行かないで…




「けん。」



愛ちゃんは握ったドアノブを放して、ゆっくり後ろを振り返って言った。



「大丈夫だから。あたしね、これでも強いんだよ?。」



愛ちゃんはさっきと同じ笑顔で言うと、ノブに手をかけた。




あぁ、行ってしまうんだ。


ただこれしか思えなかった。



止めちゃいけないんだね。



何かあるの?


帰ってくるよね…?