制服のズボンのポッケが振動する。


LINEだ。


四時限目が終わったばかりの教室は

解放感で満ちている。



教室のあちこちから、早くも弁当のにおいがする。



学校にちょっとだけ持ち込まれる、

それぞれの家庭のにおい。

オレは嫌いじゃない。


とにかく、昼休憩は空っぽになった腹が満たされる

幸福の時間だ。


オレだって、袋からパンを取り出して

今、まさにかぶりつこうとしていた。


(かーさんの名誉のためにゆっときますけどね、

オレもたいていは、かーさんの手作り弁当よ)



仕方なくおれはポッケからスマホを取り出して、

LINEのメッセージを確認する。


体育館の裏で待ってる


かわいいスタンプとちらばるハートマーク



みすずだ。



オレのかわいい彼女。



彼女の呼び出しなら行かなくっちゃね。


オレはパンを口に押し込むと、牛乳で流し込んだ。


手をはたいて席を立った時

秀真が教室に戻ってくる。



「あれ、みつるくん。おでかけ?」

「そうよー。呼び出しだからー。」



オレは秀真に、キスするときみたいな顔をして言う。

それだけで何か察したらしい秀真は


「五時限目、戻ってこなきゃ、メッよ!」



と、オレに親指を突き出して見せる。

「はーい。」

と、いい子の返事をしてオレは足早に教室を出た。