図書室の白川さんー星ヶ丘高校絵巻ー

ゆらり、とオレは白川さんに近づいた。


「白川さんもさあ、こんなに図書室にばっかりいて飽きない?


もっと楽しいこと、したいとか思わないの?」


白川さんの目に、警戒の色が走った。少し、後ずさる。


「そんなに、本ばっかり読んで楽しい?」


揶揄するようなオレの口調に、白川さんは小さくうなずく。


「…楽しいけど。」


いけない?


小さいけど、迷いがない言い方だった。


「うそばっかり。本当は思ってるんじゃないの?

私も男子と話したいとか、付き合ってみたとか思ってるんだろ?」


なんで、こんな言葉を白川さんにぶつけないといけないのか


自分でもよくわからなかった。


怒らせてみたかったのだ、とは思う。


そして、それは成功した。


白川さんの表情が、さっと変わった。白川さんは明らかに怒っていた。


「思ってない。本を借りないのなら、もう出て行って。」


怒りを帯びた声で、白川さんが言う。


はじめて感情的な声をきいて、オレは昏い喜びを感じた。