カウンターには、予想通り白川さんがいた。


彼女はすでに冬服を着ていた。


あいかわらず隙のない着こなしだ。


オレが図書室に入ると、白川さんはふと目をあげて


こちらを見た。


久しぶりの対面だというのに、たいして嬉しくもなさそうに


白川さんは小さく頭をさげた。


隣にいる二年生女子のほうが、まだ愛想がいい。


今日は、図書室にいる生徒も少ない。


これがまた、いけなかった。


「久しぶりー。本、返そうと思ったけど、忘れてきちゃった。」


明るくおどけて言ってみたけど、白川さんはにこりともしない。


「別にいいよ。今、私読まないから。」


生真面目な顔で、小さくそう言った。


「あれ、全部読んだよ。おもしろかった。やっぱ、オレには


あれぐらいがちょうどいいのかねー。」


夏休みに読んだ本の内容を思い出しながら言うと、


白川さんは少し嬉しそうな顔をして頷いた。


「読めるものから、ちょっとずつ読んでいくといいよ。」


ああ、何だ、この安心感?


本のことについて話す白川さんの、ゆるぎない安定感。




壊してやろうなんて



けっしてそんな風に思ったわけじゃない。