「ピアノを……」


私の唄を聴いて、月島先輩はピアノを弾きたいって思ってくれたの?

本当に?


「身投げと思って近寄ったのは嘘」


「えっ……?」



そうだ、最初はそう勘違いされて―…

でも、嘘って?


「同じ学校だって事も分かってた。ただ、見かけるといつもお前が下向いて歩いてるから気になって―…何で歌う時は活き活きとしてるのに他では俯いてんのかな、とか勝手に気にしてた」


「嘘……」


「嘘ついて何になるんだよ。気付いたら好きになってたんだよ、海音を」


今、目の前にある月島先輩はとても優しい顔をしてる。

そして優しい指先で私の頬に伝う涙を拭って、


「―…」


キスをくれた。

優しくて、甘くて、愛しさが溢れる月島先輩とのキス。