今までに平穏に―…ううん。日陰でひっそりと毎日を過ごしていた私にとって、宝条さんの言う揉め事はなかなかリアルに入って来ない。

ただ分かるのは、あの人のせいで月島先輩はピアニストとしての活動が出来なくなって、アヤさんとも別れてしまったってこと。

芹沢先輩の忠告も理解できる。

そんな世界に免疫がない私にだって、“キケン”だって信号を感じる。

いーちゃんが言っていた暴力事件って、この事だったんだ……

少しずつ、頭の中で色んなことが整理されていく。

芹沢先輩がアヤさんと別れたのは三年前って言ってたし、辻褄が合う。


「バイバイ、またね、月島の彼女サン」


「―…っ」


キャンディーのなくなった棒を左右に振って、さっていく宝条さん。