その日は結局、月島先輩が呼んでくれたタクシーで帰宅した。

またまたタクシー代まで払ってもらってしまって、余計に申し訳なくなる。


家に帰ってから何度も鏡を覗いては、自分の口唇を確認してしまう。

どうして、月島先輩が私なんかにキスしなたのか全くわからないまま……

〝キスしたくなった”

なんて、やっぱり月島先輩の気まぐれなのかな、って思う。

きっと先輩みたいに輝いているクラスの人たちは拒まれる要素なんてないから、気まぐれでもそんなことが出来ちゃうんだろうな、って。

そう考えると悲しくなるけど、それなら納得もできる。

月島先輩……

知れば知る程、掴みにくくて考えていることがわからない。

優しくしてくれたり、怒られたり、美容室に連れて行ってくれたり、ワンピースをプレゼントしてくれたり―…

あの出逢いの日から、どんどん関わる事が多くなって、こんな私に構ってくれる。

どうして……?

でも単なる気まぐれじゃないとするのなら、思い当たる節がやっぱり一つだけ。


「これ……」


この真珠の力なんだって思えば辻褄が合う。

あの月島先輩からキスされるなんて非現実的な事を現実に出来るのは、願いが叶う真珠だけ。